―切れのバンのために [心の栄養]
20年間も会わなかつた同年輩の友人と食事をしながら、
突然彼は心の重荷を下ろす気になりました。
一瞬ためらったあと、涙ながらに語り始めました。
「私の手は血で汚れています。
それは、ロシア戦線で引き上げる途中のことでした。
私の周りでは毎日誰かが死んでいきました。
飢えとはなんと恐ろしいことだったでしよう。
最初の合図で銃を打てる準備をしておくように……
そして銃を持たずに決して農家に入ってはいけないと、
私たちはお互いに言い合っていました。
私がその家に入つて行ったとき、
そこには、一人の老人と悲しそうな目をした金髪の少女がいました。
『パンをくれ、バンを!』と私は大声で言うと彼女はかがみこみまました。
恐らく彼女が銃か爆弾かを取り出すのかと思って銃を打ちました。
彼女は仰向けに倒れました。私が彼女に近づいてみたら、
彼女は一つのパンを握り締めていました。
私に一つのパンを差し出そうとした罪のない14歳の少女を殺したのです。
私はこの出来事を忘れるために酒を飲み始めました。
神は私のような人をゆるしてくれるでしょうか?……。
宗教の道を選んだ君だから、何か言ってくれ……
人の心を見抜くことができる神は私をゆるしてくれると聞かせてくれ……」
皆さん、様は私たちの犯した罪や過失をゆるしてくださるのです。
もし私たちがその罪と過失を心から悔やみ、悔い改める用意があるなら……。
(ドン・ボスコ社「落ち葉」より)
今、ロシアはウクライナに侵略戦争で攻め入り
宮殿で何不自由なく生活している人の命令で
最前線で命を懸けて戦っている兵士が居ます。
そして多くの市民が日常の平凡な生活を失われ、
飢えに苦しんでいます。
飢えは食料があれば満たされます。
寒さは暖が取れれば凌げます。
しかし、殺された肉親、友人、知人、恩人たちは帰ってきません。
戦っている兵士も、避難している多くの市民は
癒されない心の傷を負い
涙は涸れています。
為政者に人の命の重みを悟ることができる
ようにお祈りします。