食べない、とは言っていない [生きる]
友達のお母さんは昨日95歳の誕生日を迎えた。
がんに侵され余命は今年一杯と医者から言われ、本人に告知した方がいい、と言われた。
しかし、友はここまで長生きして母親に今年一杯の寿命だと宣告するのは酷すぎる。
子供たちの胸の中にしまっておいて、悔いのない余生を過ごさせたいと決めた。
母親は苦労して来たので、食事も質素だったらしい。
ある日、夕食の食卓にマグロの中トロと赤身(計5000円)出した。
こんな高いものを買って来て、という不満そうな顔をして
「わたしはマグロなんて嫌いだよ」とそっぽを向いてしまった。
「嫌いだったら食べなくていいよ。俺が食べるから」
「何も食べないとは言っていないよ。2.3切れなら食べるよ」
ゲーム感覚のような会話だと、友は笑いながら話す。
お互いに口には出せない「親子」の愛情の表現。
あたたかいものが、ぼくの体中を回り酔いが覚めた。
お酒の極上の「肴」でした。