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この世を支配するのは愛と正義と人心を得る事 [いろいろな思い]

60年前に某作家から頂いた武者小路実篤氏の生原稿を妻が見つけた。

読んでみると正に今の戦争状態を予想していたかのようだ。


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今日雑感  武者小路実篤。

 この頃は見たい展覧会が実に多い。若い時だったら飛んでゆきたい。又事実飛んで行ったにちがいない展覧会が、沢山あるのだが、齢のせいか、中々見にゆく気になれない内に日がたつ、気がついた時はすんでいたと言う事がよくある。自分ではそう老人になったと思わないのだが、今矢張り気になるのは戦争だ。どうも新聞を見ていると、戦争が絶対にないとは言い切れない空気が見えて来ている。まあ大丈夫とは思うが、フルシチョフのような男が、あんまり調子に乗ると何を仕でかすかわからない気がする。

 西ドイツに対する恐怖が、今の内ならと言う気があるのじゃないかと考えられ、万一の事があったら大変だと思う。今度米ソの戦争があれば世界は破滅しないまでも、大半の人は死をまぬがれない事になる。米ソの人も大半死ぬか、僕達もとばっちりを受ける。死の灰に至ってはどう言う事になるか。子供や孫のことを考えても、絶対に悲惨な事はやめてもらいたい。しかし僕がいくら心配しても、どうにもならない。野心家がいつの時代にも何処かにいる事は実に情けない。

フルシチョフ一人の考えでどうにでもなるように、僕には考えられるのは買いかぶりで、恐ろしい者はその裏にいるのかも知れないが、いい気になって、おどしている内に、段々恐ろしい関係が生まれてくるのではないかと思う。そんな事のない事が実に願はしい。

 スターリーよりはフルシチョフの方がお人好しかと思うが、いい気な処があっては困る。僕たちは心配するより他仕方がないのは、情けないことである。

しかし今度世界がひっくりかえれば、一番ひどい目にあうのはソ連と米国であろう。その位の事は知っているんだろうと思うから、心配しないでもいいと思うが、おどしっこなしで、お互いに戦争は起こるまいと思いすぎて、虫のいいことを考えすぎるのは恐ろしい。驚いたり、心配したりしても仕方がないから、僕たち無力の国の住民は真理の力に立って、正々堂々と正しい道を進んでいくより仕方がないと思う。この世を本当に支配するのは結局愛と正義の道を進むことで人心を得る事だと思う。

 スターリン時代スターリングを賛美していた連中が、今になるとスターリンのやっていったまちがいを公然と非難し、非難しない事を恐れている。当然の結果とも思うが、スターリンが正しい事を行っていたら今になれば益々讃美されるのだと思うが、それではスターリンは勢力がとれなかったのかも知れない。

 この頃フルシチョフの人相がよくなって、昔の人相にくらべると好々爺の感じがいくらか出て来たかと思うが、しかしいい気持ちでいられなくなるとどうなるか、ソ連の人は御無理御尤もで通用するが、世界中はそうはゆかない。七分三分のかけあいが、うまくとれればいいが、一つ狂い出すと、どういう結果になるか。

 

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