若い女性が大きなボストンバッグと他に袋を二つ持って改札を通り抜けた。

ボストンバッグは車がついていた。

しかし電車に乗るためには、階段を上らなければならない。

袋は肩にかけて、両手でボストンバッグを階段を一歩一歩昇る。

しかし、これでは乗り遅れると思ったのか、二つの袋を階段上に置き、

また降りてきてボストンバッグを両手で持ち上げてきた。

しかし重たくて思うように昇れない。

すでに階段を昇り、上で見ていた僕は降りて行き手伝った。

危ういところで電車に乗れた。

早い時間はダイヤの間隔が永いので、乗り遅れると20分待たねばならない。

これで一日一善のノルマは果たした。


途中で杖をついた老婦人が乗ってきた。

車内はかなり混雑してきて、席を譲るにも前に人がはだかり

後ろ向きの老婦人に声が掛けられない。

すると前に座っていた青年が素早く老婦人に席を譲った。

その青年は老婦人が座り終わるまで暖かな眼差しで見守っていた。

僕だったら、「どうぞ」と席を譲るだけだろう。

座り終わるまで見守る心を、青年から教えられた。