12月のある日、親戚の大学生が行方不明になったと連絡が入った。家族は家庭内や友達、大学での不満や問題などを聞いたことがなく、家出をする理由が見当たらないと話す。


警察に捜索人願いを出して間もなく警察から、渓谷に架かる橋の欄干に彼のカバンが見つかったと連絡が入った。


早速警察による周辺の捜索が行われたが手掛かりは得られなかった。


それから2週間余りたち、父親は諦められずに単独で渓谷に降り探索をした。雪が本格的に降りだすと、雪解けの春先までは捜索が困難になるからだ。警察が行った捜索の繰り返しだったが、下方の笹藪の中にこんもりと盛り上がっているのを見つけた。近寄って見ると、そこには愛息子が横たわっていた。警察の司法解剖の結果、死亡の原因特定はできないと回答。


父親は、もう少し警察が丁寧に捜索をしていてくれたら、と悔いが残しながらも、当時は寒いのに精一杯捜索してくれたことに感謝していた。


家族は、息子を家族が待つ我が家に年内に連れ戻すことができて良かった、と悲しみの中にも安堵している。