トイレに1時間半

友人の奥さんが入院していた時の出来事である。

病棟内でコロナが発生し、大部屋から個室に移された。

個室にうつされると病室から出ることは禁じられ、

やがて寝たきりになってしまった。

トイレに行くときには、看護師を呼び看護師と車椅子でトイレに行き、

看護師は用を済むまで外で待っている。

用を足すと看護師が車椅子で病室に連れていく。

これが当たり前のことだった。が

しかし友達から用足しのことを聞いて呆れてしまった。

ある日奥さんに好物の食べ物を持って行っても

前ほど食べなくなったので理由を聞いてみたら、

トイレで30分座っているのは当たり前で、

1時間半も座らされていることもあるという。

友達がナースセンターで理由を聞いてみたら、

奥さんがトイレに入ると別の用事しているうちに忘れてしまうというのだ。

友達はその答えに憤慨して

「家族が看護できないから看護師がいるのではないんですか。

患者を看護することは家族の負担をなくし、

結局は患者の家族も診るということに繋がるのではないのですか」

と抗議したが、反応は余り感じられなかったという。


風太郎が入院した時には、

看護師によっては一緒にトイレに入る人もいたが、

殆どの看護師はドアの外から数分おきにノックしたり声をかけて様子を伺ってくれた。

看護師は人の命を預かっている職業ですので、

「物」でなく大切な「者(人)」の

お世話をしているという認識が大切なのではないでしょうか。